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第25話 消えた配信者⑨

last update Fecha de publicación: 2026-07-23 19:00:04

緊急放送システム「Global Emergency Network」 2024年3月24日 19:55 (GMT)

【人類への最終警告】5分後に世界同時配信開始

各国政府緊急合同声明

人類の皆様へ

本日20:00 GMT、全世界のデジタルメディアを通じて大規模な神経操作攻撃が実行される予定です。

緊急指示

- すべての電子機器の電源を今すぐ切ってください

- インターネット接続を断ってください

- 他人との接触を避けてください

- 地下施設または山間部に避難してください

各国は可能な限りの対策を講じていますが、攻撃の規模は前例がありません。

これが人類への最後の警告となる可能性があります。

生き延びてください。

人間らしい心を保ってください。

希望を捨てないでください。

米国大統領、英国首相、ドイツ首相、フランス大統領 他23カ国首脳

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  • 菊池まりなホラー短編集   第44話 告知義務外物件⑨

    矢崎からメールが届いたのは、募集開始の前日だった。件名は「資料返却のお願い」。本文は、極めて事務的だった。> お世話になっております。> 先日の調査、誠にありがとうございました。> つきましては、調査時にお渡しした資料一式をご返却いただけますでしょうか。> また、調査で取得されたデータ(録音、写真等)につきましても、削除をお願いできればと存じます。> 何卒よろしくお願いいたします。私は、画面を見つめた。資料の返却は、理解できる。でも、データの削除まで──これは、明らかに証拠の隠滅だった。私は、返信を書いた。> 承知しました。> 資料は明日お返しします。> ただし、データの削除については、少し考えさせてください。送信してから10分後、電話が鳴った。矢崎だった。「すみません、急に」「いえ」彼は、少し躊躇ってから続けた。「データの件ですが……これは会社からの正式な要請なんです」「法的な根拠はありますか」「いえ、ありませんが……」矢崎は、言葉を選んだ。「お願い、という形です」「断ったら?」「……困ります」彼の声は、疲れていた。「正直に言います。上からかなり圧力がかかっているんです」「圧力?」「この件を、なかったことにしたいんです。会社は」私は、黙った。矢崎は、続けた。「募集を開始する以上、過去の調査記録は残したくない。もし後で問題になった時、『調査はしたが、異常は見つからなかった』という立場を取りたいんです」「でも、異常はあった」「証明できないんです」矢崎の声が、掠れた。「法務が言

  • 菊池まりなホラー短編集   第43話 告知義務外物件⑧

    報告書を提出してから、3日間、矢崎から連絡がなかった。私は、その間に事故物件情報サイトへの掲載文を準備していた。大島てる系のサイトに載せるなら、こういう文面になるだろう。東京都杉並区荻窪○-○-○ コーポ青葉203号室過去の入居者が退去後、行方不明。詳細不明。でも、これでは不十分だ。「行方不明」では、事実を伝えていない。私は、何度も書き直した。過去の入居者の存在が、退去後に確認できなくなっている。いや、これも曖昧だ。入居者が、部屋から出られなくなっている可能性。でも、これでは誰も理解できない。私は、キーボードから手を離した。何をどう書いても、この現象は言語化できない。そして──もし掲載したとして、誰が信じるのか。その時、電話が鳴った。矢崎だった。「お疲れ様です。報告書、拝見しました」「はい」「それで……少し、お話があります」彼の声は、緊張していた。「今からお時間ありますか」1時間後、私はエリアプランニングのオフィスにいた。会議室には、矢崎の他にもう一人、スーツ姿の男性がいた。「こちら、当社の法務担当の者です」法務担当は、40代くらいの男性。表情は硬かった。「報告書を拝見しました」彼は、私の報告書を机に置いた。「結論から申し上げます。この内容での掲載は、お控えいただきたい」私は、予想していた反応だった。「理由を教えていただけますか」「まず、法的根拠が不明確です」法務担当は、冷静に説明を始めた。「告知義務が発生するのは、『心理的瑕疵』が明確な場合です。自殺、他殺、孤独死など、客観的な事実

  • 菊池まりなホラー短編集   第42話 告知義務外物件⑦

    調査を始めてから、2週間が経っていた。私の手元には、膨大な記録が集まっていた。契約書、入金記録、退去通知、近隣住民の証言、録音された音──すべてが揃っている。でも、何も分かっていない。私は、もう一度すべての資料を並べた。そして、ひとつの仮説を立てた。翌日、私は矢崎と、コーポ青葉の大家に会うことになった。大家は60代の男性で、この建物を20年近く所有している。「田所さん?ああ、確かに入居者にいましたよ」彼は、あっさりと答えた。「覚えていらっしゃるんですか」「ええ、まあ……記録には残ってますからね」彼の答えは、微妙だった。「実際にお会いになったことは?」「入居の時に、一度だけ」「どんな方でしたか」大家は、少し考えてから答えた。「……普通の、若い女性でしたよ」「顔は覚えていますか」「いや……正直、あまり」彼は、少し困ったように笑った。「おかしいですね。つい3年前のことなのに」私は、核心に触れた。「あの部屋で、何か起きましたか」大家は、表情を変えた。「何か、とは?」「事故、事件、あるいは……何か普通じゃないこと」大家は、黙った。しばらくの沈黙の後、彼は口を開いた。「……分からないんです」「分からない?」「何が起きたのか。いや、何かが起きたのかどうかも」彼は、窓の外を見た。「ただ……あの部屋は、おかしいんです」「おかしい?」「人が住むと、消えるんです」私は、身を乗り出した。「消える?」「ええ。正

  • 菊池まりなホラー短編集   第41話 告知義務外物件⑥

    録音された音を何度も聞き直した。ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ。規則的な、何かが這う音。でも、この音を立てていたのは誰なのか。そして──田所真理子は、今どこにいるのか。私は、もう一度派遣会社に連絡を取った。「以前お問い合わせいただいた田所真理子さんの件ですが……」担当者の声が、少し躊躇いがちになった。「実は、当社でも少し調べまして」「何か分かりましたか」「契約満了後、本人からの連絡が一切ないんです」「更新の意思確認は?」「メールで行いました。『更新しない』という返信はありました。でも……」担当者は、言葉を選ぶように続けた。「その後、源泉徴収票を送付したんですが、返送されてきたんです」「返送?」「はい。『宛所に尋ねあたりません』と書かれて」私は、メモを取った。「送付先は?」「契約書に記載されていた住所です。コーポ青葉203号室」「でも、その時にはもう退去していたはずでは?」「ええ。だから転居先を確認しようとしたんですが……本人と連絡が取れなくて」担当者は、ため息をついた。「結局、源泉徴収票は未送付のままです」私は、次の質問をした。「派遣先の企業には、確認されましたか」「はい。そちらでも、田所さんの記憶が曖昧だと」「曖昧?」「『確かに派遣社員がいた』とは言うんですが、誰も詳しく覚えていないんです。デスクの場所、担当していた業務、全部記録には残っているんですが……」担当者の声が、少し不安げになった。「人事の方も、不思議がっていました。1年間働いていた人のことを、誰も覚えていないなんて」私は電話を切り、次に矢崎に連絡した。「田所さんの住民票、取得で

  • 菊池まりなホラー短編集   第40話 告知義務外物件⑤

    矢崎に提案したのは、私からだった。「一晩、あの部屋で過ごさせてもらえませんか」電話の向こうで、矢崎が黙った。「……何か、分かると思いますか」「分かりません。でも、近隣住民が聞いた『音』が本当にあるなら、確認したいんです」矢崎は、しばらく考えてから答えた。「分かりました。鍵をお渡しします」その日の夜、私は203号室にいた。室内には何もない。持ち込んだのは、寝袋、懐中電灯、録音機、そしてノートパソコンだけ。時刻は午後9時。窓の外は、既に暗くなっていた。私は部屋の中央に座り、録音機のスイッチを入れた。小さな赤いランプが点灯する。これで、何か音が鳴れば記録される。部屋は、静かだった。隣の202号室からは、テレビの音が微かに聞こえる。下の階からは、誰かが歩く音。普通の生活音だ。でも──この部屋からは、生活音が聞こえなかったと、202号室の住人は言っていた。1年間、隣に人が住んでいたのに。私は壁に手を当ててみた。薄い。確かに、これなら隣の音は聞こえるはずだ。なのに、田所真理子が住んでいた時は、何も聞こえなかった。まるで、この部屋だけが音を吸収していたかのように。午後10時。私は寝袋に入り、ノートパソコンで調査記録をまとめていた。・記録上は完璧に成立 ・しかし関係者全員の記憶が曖昧 ・父親は娘の存在を否定 ・近隣住民は『何かを引きずる音』を証言そして、最も不可解な点。・田所真理子は、どこへ消えたのか午後11時。私は、ふと気づいた。部屋が、静かすぎる。隣のテレビの音が、聞こえ

  • 菊池まりなホラー短編集   第39話 告知義務外物件④

    矢崎から連絡が来たのは、聞き込みから二日後だった。「お時間ありますか。管理会社の記録を確認したんですが……一度、お見せしたいものがあります」私たちは、エリアプランニングのオフィスで会った。会議室に通されると、矢崎はテーブルの上に数枚の書類を広げた。「これが、2020年4月から2021年3月までの、203号室に関する記録です」私は書類を見た。入居申込書、契約書、家賃の入金記録、退去通知、鍵の返却確認書──すべてが揃っていた。「完璧ですね」「ええ。契約上は、何の問題もありません」矢崎は、その中から一枚を取り出した。「でも、これを見てください」それは、管理会社の業務日報だった。2021年2月27日の記録。> 物件名: コーポ青葉 > 対応内容: 203号室、近隣からの騒音に関する問い合わせ対応 > 詳細:102号室住人より、夜間の物音について連絡あり。当該部屋に電話連絡を試みるも不通。翌日訪問予定。私は顔を上げた。「騒音の苦情があったんですか」「はい。でも……」矢崎は次のページをめくった。2月28日の記録。> 物件名: コーポ青葉 > 対応内容: 203号室訪問 > 詳細: インターホン応答なし。ドア越しに呼びかけるも反応なし。緊急連絡先に電話するも繋がらず。後日再訪問予定。「誰もいなかった?」「記録上は、そうなっています」矢崎は、さらにページをめくった。3月1日。> 物件名: コーポ青葉 > 対応内容: 203号室再訪問 > 詳細:本日も応答なし。ただし郵便受けに郵便物の蓄積は見られず。室内に生活の気配あり。契約者本人からメールにて『問題ありません』との返信あり。対応完了。私は矢崎を見た。

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